IFS 内的家族システムとは、リチャード・シュワルツ博士が開発した
心理システムのフレームワークです。
このシンプルかつ精密なアプローチは、自分の中のどんな部分も歓迎するマインドフルネスなセルフの視点、そしてセルフ・コンパッションがもたらすパワフルな癒しの可能性を秘めています。
マインドの多重性:
私たちの心は、多くの副人格「パーツ」から成り立っています。
たとえば、誰かがあなたに今夜の飲み会に行くかと尋ねたときに「行きたい気持ちもある、でも、その一方で、帰って休みたいという気持ちもある」などと返答していることはありませんか。このように、私たちはいつも自分のパーツについて話していますが、実は自分ではあまりそれに気付いていません。
パーツワークを展開していくと、パーツはまるで家族のように、互いに相互作用するシステムを形成していることが見えてきます。お互い気の合うパーツもあり、また気の合わないパーツもあるでしょう。しかし、パーツは皆、各々の視点から、自己のシステムがより良いの状態であることに関心があります。私たちが注意深く自己のシステムを再構成することで、あまり好ましくない大変な状態にあるパーツは急速に変化する可能性があります。
「悪い」パーツというのはありません。システムを使ってワークすることの目的は、パーツを排除するのではなく、対話を通じて、セルフがパーツを理解し、彼らが望む役割を果たすのを助けることです。
自己のシステムを理解し意識を向けることで、以下のことが可能になります
- 自分のパーツに気がつくことで、よりバランス取れた安心感を得る。それと同時にセルフの質(落ち着き、創造性、明晰さ、思いやりなど)をパーツたちと分かち合える。
- パーツが負担/困難な経験を手放せるよう導き、そのパーツが、システムにとって、より友好的な役割に変容する。
- 他の人との関係性に、よりセルフの資質を持ち込むことで、人間関係の質を向上させる。
IFSコンセプト:セルフ(大きな自己)
セルフは誰にでも存在します。生まれた時にすでにあり、パーツとは異なるものです。それは自我のない在り方です。
セルフは私たちが誰であるかという意識の根底にあるものです。誰もが生まれながらにして持っている自己のいのちの先導者としての資質を持っています。セルフ・リーダーシップとは、その視点から何かを見たり経験したりすること、そして、自分の内なる様々なパーツや他の人々と協業することができる視点です。
私たちがセルフを認識し、それと共に存在しているとき、そこには、落ち着き、好奇心、つながり、信頼、創造性、勇気、そして明晰さの質があります。自分が尊敬する人、自分をサポートしてくれている感じる人を思い浮かべてみてください。きっと、彼らはあなたとの関係において、多くのセルフのエネルギーをもたらしているのではないでしょうか。
- 他の人と対話するのと同じような方法で、自分の内側でもパーツ同士が対話しています。気の合う同士もいれば、そうでないものもいるでしょう。パーツは皆、各々のやり方で、あなたのために良いと思う考えに基づいて行動します。( 彼らが追いやられ、苦しんでいない限りは)
- 思考、感情、感覚、イメージ、音、身体的症状など、さまざまな形で経験されます。
- あなたの役に立とうとして、あなたの注意を引くためにさまざまな戦略を持ち出します。(極端なケース:うつ病として現れたり、乖離させたり、中毒になったり、感情を爆発させたり、または、あなたに「もっと変わるべきだ」と言ってきたりなど)
- パーツたちは、あなたを保護するために組織化されており、支配したり、追いやったりする役割を取ることもあります。中には痛みや重荷を背負っている脆弱なパーツもあります。
プロテクター
- マネージャー:あらかじめ防衛策をとり不快な感情や圧倒されるような感覚をもたらすパーツの活性化を阻止しようとする
- ファイヤーファイター:何かに反応し活性化した脆弱なパーツから注意をそらそうとする
エグザイル(インナーチャイルド・いないことにされた部分)
システム全体から隔離されており、「私は役に立たない」などの極端な感情や信念を持つパーツ。幼いパーツのことが多いです。
マネージャーというプロテクター:
これらはプロアクティブなパーツで、あなたの日常生活を管理しているパーツです。
マネージャーは、自分が飲み込まれてしまうような、感情(痛み、恥、拒絶の恐れなど)を回避するべく、あらゆる関係と状況をコントロールすることによって、システム内のバランスを維持しようとします。
彼らはさまざまな方法でこれを行います:
- 自分の環境、身体などをコントロール
- 他者を喜ばせる、他の人の世話する
- 完璧になろうとする
- 自己と他者を判断/評価/批判
- 心配性/無関心/リスクの回避
- 達成/がんばる/ゴールを目指す
- 受け身/悲観的
身体感覚:
硬直、呼吸の浅さ、緊張、痛み、筋肉の収縮など
身体への影響:
操作(体重増加・減少を含む)、批判、無視、知覚の歪曲、麻痺、罰を与える
多くの場合、マネージャーのパーツは「我こそが自分自身だ」と主張します。厳格で制限を課しているような人物を知っていますか。その人はマネージャーに先導されている可能性が高いでしょう。
マネージャーのパーツに共通する恐れ:
- エグザイルがシステムを乗っ取り、システムを氾濫させてしまうこと。これはしばしば、エグザイルによって完全に乗っ取られ、システムが恥や恐怖で身動きが取れなくなった場面を思い出すことに基づいています。マネージャーたちは「こんな経験は2度としないぞ!」と言って、それを防ぐために懸命に働いています。
- エグザイルに深く触れることで、ファイヤーファイターの危険な反応を誘発すること
- エグザイルの感情に圧倒されたり、それによって自分がおかしくなってしまうこと
- 自己のシステムが対処できないような「秘密」が明かされること
- エグザイルに触れることは、多くの痛みを招くので、深く探求する利点を見ることができない。より深く傷ついて、良くなるとは思えない
- 内側のワークをすることで、好ましくないことが外部との関係に起き、危険な変化を招く
ファイヤーファイター:
これは反応的なプロテクターです。衝動にかられて動くので、マネージャーのパーツによって破壊的なものと見なされます。ファイヤーファイターの目標は、エグザイルを自分から遠ざけることです。エグザイルの持つ感情をそらしたり、取り除くことです。
ファイヤーファイターはエグザイルが活性化されたときに発動します。エグザイルの感情の洪水で内部システムが圧倒されたり、氾濫することを防ぐために、ファイヤーファイターは気を散らしたり、解離したりします。
マネージャーは自分を良く見せて認められたい一方で、ファイヤーファイターにとっては、エグザイルの持つ痛みから気をそらすことだけが重要な仕事です。
そのため、マネージャーパーツは多くの場合、ファイヤーファイターの役割を認めなかったり、批判したりして対立します。
例えば、こんな会話が脳内でされるでしょう。
「昨晩のパーティーで、はめを外し過ぎたんじゃないか。」
「でもとても楽しかったんだ。それの何がいけない?」
「他の人は、きっとお前を馬鹿だと思ってるぞ。」
というように。この二つパーツがあなたの頭の中で戦っているとき、エグザイルは迷子のまま。誰もエグザイルに注意を向けていません。
ファイヤーファイターは自分の役割を負担に感じることが多く、もし可能であればもっと優しい仕事に転身したいと思っているかも知れません。
身体的な体験:
不安、パニック、過剰な警戒、消化不良、疼痛、病気、渇望や衝動
身体との関連:
苦痛を和らげようとする。そのために、化学物質や、自傷行為、感覚を鈍らせること、食べること、睡眠障害、性的な奔放さ、などの戦略を使って、エグザイルの
ファイヤーファイターとの協働:
あなたのファイヤーファイター達をもっと良く知っていくとき、彼らを「管理」しようとしないこと ー恐怖を感じているあなた自身のマネージャー達に対処する必要があるでしょう。以下の時に役立ちます:
- ファイヤーファイターのパーツと、思いやりと感謝のある関係を形成し、これまで彼らがサポートしてくれたことへの感謝を伝える。そしてあなたが、エグザイルとファイヤーファイターの双方がより楽な役割に転身できるために、エグザイルにアクセスしようとしていることの了承を得る。
- ファイヤーファイターパーツと対局にあるパーツを探す ー通常マネージャーパーツが批判的である。
- システムの中にあるこれらのパーツの力を忘れずに、敬意を持って交渉する。
エグザイル:
エグザイルは若いパーツで、トラウマやネグレクト、その他の打ちのめされた経験をしている可能性があります。自身やシステムを守るために、他の部分から隔離されています。
彼らは困難な出来事の記憶、感覚、感情を保持しており、過去から抜け出せずにいます。エグザイルが活性化されたとき、非常に激しい
感情や信念を伴います。彼らは世話をしてもらうために、そして彼らの物語を語ってもらうために努力を続けるうちに、徐々に絶望的になっていきます。
背負っている重荷から解放されると、それは、おおよそ最も敏感で傷つきやすく、遊び心のある、無邪気で、創造的な、そして親密さを愛するパーツとなります。
エグザイルは、空虚感、無気力感、抑うつ感、羞恥心、痛みなどの感情として、身体の中で経験したり、分かったりします。
エグザイルは、感覚を麻痺させたり、フリーズしたり、体を動かせなくするなど、エネルギーを枯渇させるか、あるいは圧倒するような感情や感覚で体に影響することがあります。